このページは、第一級陸上無線技術士「無線工学の基礎」令和5年(2023年)1月期 第2回(全25問)の解説です。
試験問題そのもの(問題文・選択肢)は、著作権の関係で転載していません。代わりに、各問が「どんなテーマを問うているか」を要約し、その概念と解き方を解説しています。実際の問題は、日本無線協会が公開している過去問でご確認ください。
科目全体の攻略法は無線工学の基礎 攻略、勉強の進め方は独学合格ロードマップをどうぞ。
各問には「令和5年1月期2回 基礎 A-1」のような通し番号を付けています。今後ほかの年度・回の解説が増えると、同じテーマの問題どうしを「関連」でリンクしていきます。
この回(令和5年1月期 第2回)の他科目の解説:無線工学A/無線工学B/法規
A-1 無限長ソレノイドの磁界
要約:無限長ソレノイドの内部磁界の強さを、アンペアの周回路の法則を使って導く過程の穴埋め問題。
解説:外部磁界を零とし、内部に閉ループをとってアンペアの法則(磁界の周回積分=囲む電流)を適用する。軸長1mあたりN巻・電流Iなら囲む電流はNI。内部磁界が一様であることを使うと H=NI(単位長あたりの起磁力)が得られる。閉路のとり方と「囲む全電流=巻数×電流」の対応を押さえる。
関連分野:電磁気・アンペアの法則(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-2 電界分布と電位差
要約:x方向に分布する電界E(x)のグラフが与えられ、各点間の電位差を求める問題。
解説:電位差は電界の線積分 V=−∫E dx で、グラフでは「E−xグラフの面積」に対応する(符号は向きに注意)。各区間の面積を足し引きして点間の電位差を出す。電界が正負に変化する区間では面積の符号が変わる点を押さえる。
関連分野:静電界・電位(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-3 LC回路のエネルギー
要約:定常状態の回路で、コンデンサの静電エネルギーとコイルの電磁エネルギーが等しくなるときの自己インダクタンスLを求める問題。
解説:静電エネルギーは(1/2)CV²、電磁エネルギーは(1/2)LI²。定常状態ではコンデンサに電流は流れず(電圧が確定)、コイルは短絡とみなせる(電流が確定)。両エネルギーを等しいと置き、回路から決まる電圧・電流を代入してLを解く。定常状態での各素子の扱い(C=開放、L=短絡)が出発点。
関連分野:過渡現象・エネルギー(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-4 誘電体挿入と静電容量
要約:空気コンデンサの間隔を広げて誘電体を挿入しても容量が変わらない条件から、誘電体の誘電率εを求める問題。
解説:間隔を広げた空気層と挿入した誘電体層は直列コンデンサとみなせる。元の容量C=ε0S/rと、広げた後(空気層+誘電体層の直列)の合成容量が等しいと置く。直列容量の合成式を立ててεについて解くと ε=ε0·d/(d−d0) の形が得られる。直列コンデンサの合成と「容量不変」の条件式がカギ。
関連分野:静電容量・誘電体(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-5 無限はしご抵抗回路
要約:直列・並列の抵抗が無限に続くはしご回路の、端子から見た合成抵抗を求める問題。
解説:無限に続く回路は自己相似なので、合成抵抗をRabとすると「1段先も同じRab」になる。これを使い Rab=(直列抵抗)+(並列抵抗とRabの並列) の関係式を立て、Rabの2次方程式を解く。無限回路の自己相似性で1段ぶんの関係式に落とすのが核心。
関連分野:直流回路・合成抵抗(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-6 皮相電力と力率
要約:有効電力と力率が与えられた2つの誘導性負荷を電源に接続したときの、回路全体の皮相電力と力率を求める問題。
解説:各負荷の皮相電力S=P/力率、無効電力Q=√(S²−P²)を出す。Z1は800W・0.8→S=1000VA・Q=600var、Z2は600W・0.6→S=1000VA・Q=800var。全体はP=1400W・Q=1400var、皮相電力S=√(P²+Q²)=1400√2VA、力率=P/S=1/√2。有効・無効をベクトル合成するのがポイント。
関連分野:交流回路・電力(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-7 直列共振回路
要約:直列共振回路の電圧・電流の位相や尖鋭度Qに関する記述から、正しいものを選ぶ問題。
解説:共振時はリアクタンスが打ち消し合い、L・C両端の電圧の和(直列部分)は相殺され、電流は電圧と同相になる。尖鋭度はQ=(1/R)√(L/C)で、電流がI0/√2となる2つの角周波数の幅とQには B=ω2−ω1=ω0/Q の関係がある。各式の形と位相の向きを正確に押さえる。
関連分野:共振回路(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-8 RLC回路の同相条件
要約:抵抗・コイル・コンデンサからなる回路の合成インピーダンスを求め、電圧と電流が同相になる条件を問う問題。
解説:合成インピーダンスの虚数部が零になるとき、電圧と電流は同相になる。R・L・C・ωで虚数部を書き下し、それを零と置いて条件式(L/(CR)に関する関係)を導く。そのときの電流は実数部だけで決まる。複素インピーダンスの実部・虚部分離が核心。
関連分野:交流回路・共振(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-9 トランジスタの熱抵抗と放熱板
要約:トランジスタの熱抵抗の定義式と、放熱板を付けたときの熱抵抗の大小を問う問題。
解説:熱抵抗Rthは「接合部と周囲の温度差ΔT」を「消費電力P」で割った Rth=ΔT/P〔℃/W〕。放熱板を付けると放熱が良くなり、同じPでも温度差が小さくなるので、熱抵抗Rthは小さい値になる。定義の分母・分子と「放熱板で小さく」を押さえる。
関連分野:半導体・熱設計(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-10 FETの図記号(誤り選択)
要約:図記号で示されたFETについての記述(接合形か、チャネル形、電圧極性、内部構造)から誤りを選ぶ問題。
解説:図記号の矢印の向きでN/Pチャネルや接合形/MOS形を判断し、ゲート・ドレイン・ソースに加える電圧の極性が素子のタイプと整合しているかを照合する。記号と内部構造の対応や電圧極性を取り違えた記述が誤り。素子タイプごとの特性を整理しておく。
関連分野:半導体素子(FET)(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-11 マイクロ波の電子管・半導体素子
要約:マグネトロン・進行波管・バラクタダイオードがそれぞれ利用する物理作用を問う問題。
解説:マグネトロンは強い直流電界とそれに直角な磁界の作用で発振、進行波管はら旋(遅延)回路で電子と電波を相互作用させ広帯域で増幅、バラクタダイオードは逆電圧でのPN接合の静電容量変化を利用して周波数逓倍などに使う。各デバイスと「利用する作用」をセットで覚える。
関連分野:マイクロ波デバイス(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-12 N形半導体の電流
要約:N形半導体に直流電圧を加えたとき、自由電子の移動によって流れる電流を求める問題。
解説:電界E=V/l、ドリフト速度v=μE、電流I=n·q·v·S(n=電子密度、q=電荷、S=断面積)。E=8/0.02=400V/m、v=0.2×400=80m/s、I=1×10²¹×1.6×10⁻¹⁹×80×2×10⁻⁶≒25.6mA。ドリフト電流の式 I=nqvS に値を入れるだけ。
関連分野:半導体・伝導(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-13 トランジスタ増幅回路の入出力インピーダンス
要約:h定数(hie・hfe)が与えられたトランジスタ増幅回路の入力・出力インピーダンスを求める問題。
解説:簡易等価回路で、入力インピーダンスは構成により決まり、エミッタに抵抗REがある(エミッタフォロワ的な)構成では入力側からREがhfe倍されて見えるため非常に高くなる。出力インピーダンスはエミッタ側から見た値で比較的低くなる。h定数の意味と等価回路の組み立て方がポイント。
関連分野:増幅回路・h定数(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-14 ソース接地FET増幅器の電圧増幅度
要約:増幅率μ・ドレイン抵抗rD・負荷抵抗RLが与えられたソース接地FET増幅器の電圧増幅度を求める問題。
解説:簡易等価回路で電圧増幅度の大きさは |Av|=μ·RL/(rD+RL)。μ=180、rD=36kΩ、RL=4kΩを入れると 180×4/(36+4)=18。出力側でrDとRLが分圧する形(分母がrD+RL)になる点を押さえる。
関連分野:増幅回路(FET)(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-15 演算増幅器の増幅回路
要約:理想オペアンプの増幅回路で、電圧増幅度・入出力の位相差・ボルテージフォロワになる条件を問う問題。
解説:この構成は非反転増幅器で、増幅度Av=1+R2/R1=1+9/1=10、入出力は同相(位相差0)。R1=∞・R2=0にすると増幅度1のボルテージフォロワになる。非反転増幅の式と、各抵抗を極端にしたときの動作を押さえる。
関連分野:オペアンプ(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-16 論理回路の論理式
要約:与えられた論理回路の入出力関係を表す論理式を選ぶ問題。
解説:各ゲートの出力を入力から順に書き下し、最終出力Xを論理式で表す。ド・モルガンの法則や分配法則で整理して選択肢の形に合わせる。ゲートの記号(AND/OR/NOT/NAND/NOR)の動作を正確に追うのが核心。
関連分野:論理回路・ディジタル(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-17 コイルの分布容量
要約:コイルの分布容量C0を、共振用コンデンサCSと共振周波数の関係から求める問題。
解説:コイルLと(外付けCS+分布容量C0)が共振するので、共振条件 (2πf)²·L·(CS+C0)=1。2つの周波数fと対応するCSの組から、未知のLとC0について連立して解く(fを2倍にするとCS+C0が1/4になる関係などを利用)。分布容量を「見かけの並列容量」として扱うのがポイント。
関連分野:測定・分布容量(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-18 電流計・電圧計法の誤差
要約:電流計と電圧計の指示値から未知抵抗RX=VV/IAを求めたときに、計器の内部抵抗によって生じる百分率誤差を求める問題。
解説:計器の内部抵抗(電流計rA、電圧計rV)が回路に影響するため、RX=VV/IAは真値からずれる。接続(電流計が内側か外側か)に応じて誤差の式を立て、rA・rVと真値の関係から百分率誤差を計算する。計器接続による系統誤差を定量化する問題。
関連分野:測定・誤差(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-19 ブリッジによる容量・抵抗測定
要約:ブリッジ回路で静電容量CXと抵抗RXを測定するときの、平衡条件を満たす式を選ぶ問題。
解説:ブリッジの平衡条件(対辺インピーダンスの積が等しい)を複素数で立て、実部・虚部に分ける。与えられた平衡条件 ωCXRX=1/(ωC0R0) と合わせ、各抵抗・容量の比の関係式を導く。複素インピーダンスの平衡条件を実部・虚部に分けるのが核心。
関連分野:測定・ブリッジ(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-20 二重積分形A-D変換
要約:二重積分形A-D変換回路の動作(入力電圧の積分とパルス数の関係)を式で追う穴埋め問題。
解説:前半は未知入力Vxを一定パルス数No(時間No/fc)だけ積分し、出力はVox=−(Vx/CR)(No/fc)。後半は逆極性の基準電圧Vsを積分して0Vに戻るまでのパルス数Nxを数える。両者を等しいと置くと Vx=(Nx/No)·Vs となり、入力に比例したパルス数が得られる。積分時間とパルス数の比例関係が核心。
関連分野:A-D変換(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-1 移動導線の起電力
要約:磁極間を移動する正方形導線に生じる起電力について、式・大きさ・電流の向き・時間波形を問う問題。
解説:起電力の大きさはe=Δφ/Δt(ファラデーの法則)。導線が磁界に入る・出る区間では一辺が磁束を切るのでe=Blv、全体が磁界中にある区間では磁束変化がなくe=0。電流の向きはレンツの法則(変化を妨げる向き)で決まり、波形は入る時と出る時で逆向きのパルスになる。磁束変化と区間ごとの起電力を押さえる。
関連分野:電磁誘導(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-2 四端子定数
要約:抵抗で構成した回路の四端子定数(A・B・C・D)を求める穴埋め問題。
解説:V1=AV2+BI2、I1=CV2+DI2で定義される四端子(F)定数を、回路の抵抗から求める。出力開放(I2=0)でA・Cが、出力短絡(V2=0)でB・Dが計算できる。各定数の定義(どの量を固定して測るか)と回路計算がポイント。
関連分野:回路網・四端子定数(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-3 サイリスタ(正誤判定)
要約:Pゲート逆阻止3端子サイリスタの性質(ゲート制御、双安定、ターンオフ、層構造、図記号)の正誤を判定する問題。
解説:サイリスタはゲート電流でアノード電流の導通を制御するスイッチング素子で、ON/OFFの双安定をもつ。一度ONになるとゲート電流を切ってもONを保ち、OFFにするには主電流を保持電流以下にする必要がある(「ゲート電流を切ればOFF」は誤り)。PNPN4層構造と図記号も確認する。ラッチ動作の理解が核心。
関連分野:半導体・サイリスタ(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-4 ターマン発振回路
要約:ターマン(ウィーンブリッジ形)発振回路の発振条件(帰還率β、発振周波数、必要な増幅度、用途)を問う問題。
解説:CRの直列・並列で構成する帰還回路の帰還率は β=1/{3+j(ωCR−1/(ωCR))}。βが実数になる(虚数部が零)条件から発振周波数 f=1/(2πCR)。このときβ=1/3なので、発振を維持する増幅度はAv=3。CR発振なので主に低周波の発振に適する。発振の振幅条件(ループ利得1)と位相条件を押さえる。
関連分野:発振回路(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-5 2電流計による電流測定
要約:内部抵抗の異なる2つの直流電流計と抵抗を組み合わせて、計器の最大目盛を超える電流を測る方法を問う問題。
解説:電流計に抵抗を並列接続すると電流が分流され、計器を流れる電流と全電流の比が抵抗比で決まる。各接続での分流比から「指示値の何倍が全電流か(倍率)」を求める。2計器を並列にした構成では、各計器が最大目盛になるときの合計が測定できる最大電流。分流器(シャント)の考え方が核心。
関連分野:測定・分流器(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
まとめ
令和5年1月期2回の基礎は、電磁気・静電気・回路・半導体・測定までまんべんなく出ています。計算は公式に値を入れる形が中心で、記述は素子や現象の原理を押さえれば取れます。出題分野は第1回と重なるので、テーマごとに「なぜそうなるか」と解き方を整理しておくのが近道です。科目全体の進め方は無線工学の基礎 攻略へ。
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