このページは、第一級陸上無線技術士「無線工学B」令和5年(2023年)1月期 第1回(全25問)の解説です。
試験問題そのもの(問題文・選択肢)は、著作権の関係で転載していません。代わりに、各問が「どんなテーマを問うているか」を要約し、その概念と解き方を解説しています。実際の問題は、日本無線協会が公開している過去問でご確認ください。
科目全体の攻略法は無線工学B 攻略、勉強の進め方は独学合格ロードマップをどうぞ。
各問には「令和5年1月期1回 工学B A-1」のような通し番号を付けています。今後ほかの年度・回の解説が増えると、同じテーマの問題どうしを「関連」でリンクしていきます。
この回(令和5年1月期 第1回)の他科目の解説:無線工学の基礎/無線工学A/法規
A-1 マクスウェルの方程式
要約:等方均質な媒質で電界・磁界に関するマクスウェルの方程式の演算子と、正弦的時間変化を代入したときの式の組合せを問う問題。
解説:基本は回転の式 ∇×E=−μ∂H/∂t、∇×H=σE+ε∂E/∂t。時間因子e^{jωt}を代入すると∂/∂t→jωに置き換わるので、∇×E=−jωμH、∇×H=(σ+jωε)E になる。発散(∇·)ではなく回転(∇×)であること、jωへの置き換えと符号を正しく扱うのがポイント。
関連分野:電磁気学・マクスウェル方程式(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-2 アンテナの基本特性
要約:2素子アレーの指向性に掛かる係数、半波長ダイポールの素子の太さと帯域幅、対数周期ダイポールアレーの帯域特性を問う問題。
解説:同方向に並べた配列の指向性は、単体の指向性に配列指向係数(アレーファクタ)を掛けたものになる。ダイポールは素子が太いほど帯域幅が広い。対数周期ダイポールアレー(LPDA)は広帯域にわたりほぼ一定のインピーダンス・指向性をもつ。用語(アレーファクタ/広帯域)を正しく対応づける。
関連分野:アンテナ・配列指向性(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-3 アンテナの指向性利得
要約:電界面・磁界面の電力半値幅が与えられ、Gd≒4π/(θE・θH)から指向性利得をdBで求める問題。
解説:半値幅を度からラジアンに直し(×π/180)、Gd≒4π/(θE・θH)に代入する。θE=3.9°、θH=2.6°なら真数で約4×10³、dBにすると約36dB。最後にlog10 2=0.3を使ってdB換算する。半値幅から放射の立体角を見積もって利得を出す考え方が核心。
関連分野:アンテナ・利得(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-4 パラボラアンテナのサイドローブ軽減
要約:パラボラアンテナのサイドローブ低減策の記述から、誤っているものを選ぶ問題。
解説:鏡面精度の向上、支持柱への電波吸収体、オフセット化によるブロッキング除去、開口周辺の照射レベルを下げるテーパ照射などは有効な対策。一方「ビーム効率を低くする」のは逆方向で、対策はビーム効率を高める側。効果の向き(高める/低くする)を反転させた選択肢が誤り。
関連分野:アンテナ・サイドローブ(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-5 自由空間の最大受信電力
要約:送信電力・送信絶対利得・受信実効面積から、自由空間での最大受信電力を求める問題。
解説:受信電力は Pr=Pt・Gt・Ae/(4πd²)。Gt=40dB=10⁴、Pt=4W、Ae=4m²、d=40km=4×10⁴m。4πd²≒2.0×10¹⁰なので Pr≒4×10⁴×4/(2.0×10¹⁰)≒8.0×10⁻⁶W。電力束密度×実効面積、という受信の基本式を押さえる。
関連分野:電波伝搬・自由空間(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-6 1/4波長整合回路
要約:1/4波長整合回路で、接続点から負荷側を見たインピーダンスの式、βl、整合用線路の特性インピーダンスZを問う問題。
解説:長さlの線路の入力インピーダンスは Zx=Z(Rcosβl+jZsinβl)/(Zcosβl+jRsinβl)。l=λ/4でβl=π/2となりcos=0、sin=1なので Zx=Z²/R。これをZ0に整合させる条件 Z²/R=Z0 から Z=√(Z0R)。1/4波長線路がインピーダンス変換器になることを押さえる。
関連分野:給電線・整合回路(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-7 集中定数回路による整合
要約:無損失給電線とアンテナ入力抵抗を集中定数(L/C)回路で整合させるときのリアクタンスXの大きさを求める問題。
解説:図のL形整合回路で、給電線側Z0とアンテナ側Rを整合させる条件を、直列・並列リアクタンスの合成から立てる。Z0=75Ω、R=108Ωを整合条件式に入れてXを解く。L形整合回路が作る変換比の式を正確に立てるのがカギ。
関連分野:整合回路・集中定数(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-8 電圧波節から見たインピーダンス
要約:入射波電圧と反射波電圧が与えられ、電圧定在波比(VSWR)と電圧波節から負荷側を見たインピーダンスを求める問題。
解説:反射係数の大きさは |Γ|=反射波/入射波=40/60≒0.667。VSWR S=(1+|Γ|)/(1−|Γ|)=5。電圧波節(最小点)から負荷側を見たインピーダンスは Z0/S=50/5=10Ω。電圧波節では実数の最小インピーダンスになることを押さえる。
関連分野:給電線・定在波(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-9 マジックT
要約:導波管のマジックTの基本動作(E分岐とH分岐の組合せ、各開口間の入出力関係と位相)の記述から、誤りを選ぶ問題。
解説:マジックTはE面分岐とH面分岐を組み合わせた4開口回路。相対する2開口は互いに分離(アイソレート)され、入力は残り2開口へ分配される。分岐の種類によって2出力が同相になるか逆相になるかが決まるため、その位相関係を取り違えた選択肢が誤りになる。E分岐とH分岐の対称性と位相を整理する。
関連分野:導波管・マイクロ波回路(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-10 逆L型接地アンテナのメートル・アンペア
要約:1/4波長逆L型接地アンテナで、メートル・アンペアを指定値にするための水平部・垂直部の長さの組合せを求める問題。
解説:メートル・アンペアは(電流×長さ)に相当する放射の指標。水平部は正弦波状、垂直部は一様の電流分布として各部の「電流×長さ」を求め、その合計が指定値(20m・A)になる長さの組合せを選ぶ。給電点電流5Aと電流分布形を使って各部の寄与を計算する。
関連分野:接地アンテナ・電流分布(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-11 円すいホーンレフレクタアンテナ
要約:円すいホーンレフレクタアンテナの特性(放射特性、偏波、開口効率、インピーダンス特性)の記述から誤りを選ぶ問題。
解説:開口面に遮蔽物がなく優れた放射特性をもち、反射波が給電点に戻りにくいため広帯域でインピーダンス整合が良い。直線偏波での交差偏波の有無や円偏波でのビーム傾きなど、偏波特性の記述の正誤を吟味する。各特性の正しい向きを取り違えた選択肢が誤り。
関連分野:アンテナ・ホーンレフレクタ(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-12 無給電アンテナ(平面反射板)
要約:マイクロ波中継の無給電アンテナで、遠隔形平面反射板の定義、有効投影面積の式、2枚組合せが有効な条件を問う問題。
解説:遠隔形平面反射板は励振アンテナのフラウンホーファ(遠方)領域にあるもの。有効投影面積は入射角θに対し Se=αScosθ(αは開口効率)。入射角が大きく2θが鈍角になる配置では1枚では効率が落ちるため、2枚(交差形・平行形)の組合せが有効。領域の名称と投影のcos則を押さえる。
関連分野:アンテナ・無給電中継(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-13 コーナレフレクタアンテナ
要約:コーナレフレクタアンテナの構造(金属すだれの間隔)、開き角ごとの影像の数、折り目からの距離dによる指向性変化を問う問題。
解説:半波長ダイポールに2つ折りの反射板(または間隔λ/10以下の金属すだれ)を組み合わせた構造。半波長ダイポールと影像の合計は開き角90°で4個、60°で6個、45°で8個と、開き角が小さいほど影像が増えて鋭い指向性になる。折り目から素子までの距離dで指向性が変わり、一般にd=λ/4〜3λ/4で単一指向性に調整する。影像法の考え方が核心。
関連分野:アンテナ・コーナレフレクタ(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-14 陸上移動通信の電波伝搬
要約:移動体通信の伝搬特性で、瞬時変動と移動速度の関係、短区間中央値の分布、周波数選択性フェージング、影響を受けにくい伝送方式を問う問題。
解説:マルチパスで生じる瞬時変動はレイリー分布に従い、周波数が高く移動速度が速いほど速いフェージングになる。短区間中央値は対数正規分布で変動する。到来波の遅延差により帯域内で振幅・位相が一様でなくなる周波数選択性フェージングが生じ、狭帯域伝送では影響が小さいが高速デジタルでは波形ひずみになる。用語(レイリー/対数正規/周波数選択性)の対応を押さえる。
関連分野:電波伝搬・フェージング(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-15 電波雑音
要約:空電雑音・電離圏雑音・宇宙雑音・太陽雑音などの性質の記述から、誤っているものを選ぶ問題。
解説:空電雑音は雷放電による衝撃性雑音が電離層伝搬で重なって連続性雑音となる。中緯度では夜間にD層吸収で低下するなどの日変化があり、宇宙雑音は銀河中心方向が強い、春分・秋分前後に太陽が主ビームに入る太陽雑音などが基本。D層の昼夜の振る舞いや雑音源の方向を逆にした選択肢が誤り。各雑音の発生源と日変化を整理する。
関連分野:電波雑音(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-16 F層1回反射伝搬の第2種減衰
要約:F層1回反射伝搬で、放射電力と受信電界強度から第2種減衰量を求める問題。
解説:半波長ダイポールの放射電界の基準式から、反射経路長に対する自由空間電界強度を計算し、実測の電界強度との差を減衰として求める。F層見掛けの高さ300kmと地上距離800kmから反射経路長を幾何的に出し、第1種減衰がないので差分が第2種減衰量。経路長の幾何と電界強度(dBμV/m)の扱いがポイント。
関連分野:電離層伝搬・減衰(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-17 球面大地の見通し距離とアンテナ高
要約:見通し距離が与えられ、等価地球半径係数4/3を使って送信アンテナの高さを求める問題。
解説:見通し距離は d≒√(2・a・h)(aは等価地球半径=4/3×実半径)。a=4/3×6,370≒8,493km。h=d²/(2a)=30²/(2×8,493)≒0.053km≒53m。等価地球半径で大気の屈折を補正する点と、見通し距離が高さの平方根に比例する式を押さえる。
関連分野:電波伝搬・見通し距離(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-18 アンテナの測定法
要約:半波長ダイポールの特性測定で誘導電界を無視できる距離、パラボラ比較法での最小距離と直径・波長の関係を問う問題。
解説:近傍の誘導電界を無視して放射界だけで測るには、送信側から一定距離以上離す必要がある。パラボラの遠方界条件では、許容最小距離はアンテナ直径の和の2乗に比例し波長に反比例する(2D²/λの形)。遠方界条件 R≧2D²/λ の考え方が核心。
関連分野:アンテナ測定・遠方界(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-19 ハイトパターンの測定
要約:直接波と大地反射波の干渉によるハイトパターンで、通路差Δl、受信電界の式、電界が極大になる受信高の間隔Δhを問う問題。
解説:高さh1・h2、距離d(d≫h1+h2)のとき通路差はΔl≒2h1h2/d。直接波と反射波(反射係数−1)の合成で |E|≒2E0|sin(2πh1h2/(λd))|。受信電界が極大になる受信高の間隔は Δh≒λd/(2h1)。干渉条件(行路差と位相)から極大間隔を導く流れを押さえる。
関連分野:電波伝搬・ハイトパターン(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
A-20 反射板を用いるアンテナ利得の測定
要約:1基のアンテナで、反射板からの戻り波の電圧定在波比から絶対利得を求める測定法の式を問う問題。
解説:送信して反射板で戻った電波を同じアンテナで受信すると、受信電力は Pr=(Gλ²/4π)×(PtG/16πd²)。反射波のVSWR Sから √(Pr/Pt)=(S−1)/(S+1)。これらを連立して G=(8πd/λ)×(S−1)/(S+1) の形で絶対利得が求まる。VSWRと反射電力比の関係(S−1)/(S+1)が核心。
関連分野:アンテナ測定・利得(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-1 散乱断面積
要約:物体に平面波が当たったときの再放射について、誘電体で生じる現象、散乱断面積の定義式、レーダー断面積、金属球の断面積を問う問題。
解説:導体には導電電流、誘電体には分極が生じて二次波源となり再放射する。散乱断面積は σ=lim(d→∞){4πd²(ps/pi)} で定義され、入射方向に戻る成分をレーダー(後方)散乱断面積という。半径rが波長より十分大きい金属球では σ≒πr²(幾何断面積)に近づく。定義式と後方散乱の意味を押さえる。
関連分野:電波散乱・レーダー断面積(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-2 TEM波
要約:TEM波の性質(伝搬方向に電磁界成分がない横波、電界と磁界の位相、導波管・平行二線での伝搬可否、真空の固有インピーダンス)の正誤を判定する問題。
解説:TEM波は伝搬方向に電界・磁界成分をもたない横波で、電界と磁界は同相。平行二線式給電線は伝搬できるが、単一導体の導波管では基本的に伝搬できない。真空の固有インピーダンスは約120π≒377Ωであり「約120Ω」は誤り。TEMの定義と固有インピーダンス377Ωから各記述の正誤を判定する。
関連分野:電磁波・伝送モード(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-3 自由空間伝送損失の導出
要約:送信電界、受信有能電力、実効長を順に立てて、自由空間伝送損失の式を導く穴埋め問題。
解説:相対利得Gtの送信で距離dの電界は E=7√(GtPt)/d。受信有能電力は Pr=(E・he)²/(4R)。実効長は he=(λ/π)√Gr・√(R/73.13)。これらを順に代入して整理すると Pr≒PtGtGr/{(4πd/λ)²} の形になり、分母(≒6.0π²d²/λ²の関係)が自由空間伝送損失に対応する。各段の式(電界・有能電力・実効長)をつなぐ流れを押さえる。
関連分野:電波伝搬・伝送損失(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-4 角すいホーンアンテナ
要約:角すいホーンアンテナの動作(インピーダンス整合と反射低減、開口面の位相一様性と利得の式、開き角を大きくし過ぎると利得が上がらない理由)を問う問題。
解説:方形導波管の終端を角すい状に広げて自由空間との固有インピーダンス整合をとり反射を減らす。開口面で位相がほぼ一様になるとき利得は G≒8πA/λ²(開口面積Aに比例)。開き角を大きくし過ぎると開口周辺の位相が中心より遅れて位相がそろわず利得が頭打ちになる。これを補うためパラボラ反射鏡と組み合わせる。開口効率と位相誤差の関係が核心。
関連分野:アンテナ・ホーン(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
B-5 ウィーラーキャップ法による放射効率測定
要約:Wheeler cap法による小形アンテナの放射効率測定で、入力インピーダンスや電圧反射係数から放射効率を求める手順・式を問う問題。
解説:金属箱をかぶせると放射が止まり、測った入力抵抗の実数部は損失抵抗Rlとみなせる。箱を外すと放射抵抗Rrが加わりRr+Rlになる。放射効率は箱あり/なしの抵抗比から η=1−(Rin′/Rin) で求まる。反射係数を使う方法では、箱の有無の|Γ|から η=(|Γ′|²−|Γ|²)/(1−|Γ|²)。放射抵抗と損失抵抗の分離が核心。
関連分野:アンテナ測定・放射効率(同分野の過去問が増え次第、ここにリンクを追加します)
まとめ
令和5年1月期1回の工学Bは、アンテナ(各種反射鏡・ホーン・接地アンテナ)、給電線・整合回路、電波伝搬(フェージング・電離層・見通し)、そしてアンテナ測定が中心です。計算は整合・利得・伝搬の公式に値を入れる形が多く、記述は各アンテナや雑音・伝搬現象の特徴を正確に覚えていれば取れます。科目全体の進め方は無線工学B 攻略へ。
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